第8章 夏祭り
「名前っち?」
歩いていると学校でしか呼ばれない呼び方に振り返る。まだ一般男性の平均身長だが、中1に比べれば大きい背に今日はおまけで頭に帽子がついている
その帽子のつばのせいで瞳の色がいつもより暗く見えるが、黄色の瞳と髪が見えた
「わ!やっぱ名前っちだ!」
『涼太』
「赤司クンも一緒なんスね」
「ああ、どうも」
喋っているところは見たことないが同じクラスだから彼らも面識はある
だがよそよそしい2人を見るのはなんだか不思議な感覚だと涼太を見ていると、彼の視線が征十郎と繋がっている手に刺さっていることに気がついた
「どうしたんスか?デートっスか?」
『違うって』
「…手、繋いでるのは?」
「名前が転びそうだから繋いでるんだよ」
『下駄すっぽ抜けるだけだわ。涼太は?』
「仕事の帰りなんス、姉ちゃんにパシられて」
『ああ、ね』
「じゃあまた学校で!暇なときメールするっス!」
『…気が向いたら返すね』
学校で喋ることはたまにしかないが涼太とは仲が良い友達だ
大きく手を振って去っていく彼に、征十郎は何も反応してないが涼太に手を振り返す
「黄瀬君と仲良いね」
『まあバスケ部以外の男子の中では仲良いかな』
「そうか」
ただ彼もそのうちバスケ部に入ってきてもっと仲良くなれるはずだが、それもまだ半年以上先の話だ
きっとそれもすぐなんだろうなと歩いていると、赤くきらきら輝くものが目に入る
『りんご飴食べようかな』
「まだ食べるのかい」
『甘いものは別腹なんだよー』
実際は紫原に少しあげたからな気もするが、別にいいかとりんご飴の屋台に行き大きいのを1つ買う
赤く輝くそれを少し眺めてから口に入れた