第55章 全中予選
家に帰り夕飯を食べ明日の準備をしていると着信音が鳴ったので、携帯を開いた
和成から「いつものストバスコートで会えねえ?」と短いメールが届いていたので了承の旨を返事し、指定された場所へと向かう
既に呼び出してきた張本人は到着していたが、いつもなら1人でもしているバスケもせずベンチに座って空を見ていた
『ごめん、お待たせ』
「おっす!ごめんな夜遅くに」
『全然…どうしたの?』
「いや、試合ありがとなって伝えたかっただけなんだよなー」
『直接?』
「そーいうこと、それだけなのにワリーね」
『…いや、あたしも試合お疲れ様って直接伝えたいなって思ってたんだよね』
そんな言葉を聞いた和成の目がぱちぱちと何回か瞬きする
暗い中でも彼の目元が赤いのが分かり、一瞬言葉が詰まってしまった
『泣いてたから、そういう雰囲気じゃないかなって』
「あー、そんなこと言われてたら余計泣いてたかもな」
『そっか、今で良かった』
「まあそん時えも良かったけどな、オレも言いたいことあったわけだし」
『うん。でも本当に試合お疲れ様、いい試合だったよ』
改めて微笑みながら彼に伝えると、彼の目尻から水が伝う
驚きつつもカバンからハンカチを探そうとすると、和成は自分の手で涙を拭った
「ワリ、まだ全然気持ち消化しきれてねえんだ」
『…うん、そりゃそうだよね』
「はー…勝ちたかったな」
勝ってしまったあたしは何を言えばいいんだろうと何も返せないまま、ようやく見つけたハンカチを彼の目元に当てる
揺れている彼の瞳と目が合い、気が付けば背中に和成の腕が回っていて目の前にあった彼の顔が自分の肩のあたりにいた