第23章 赤色と多忙な日
オーブンでクッキーを焼いている間に使ったものを洗って涼太に拭かせているとき、急に紫原が呟いた
「名前ちんって、お母さんみたいだよね~」
「あ、その気持ち分かるっス!」
『お母さん、ねぇ…』
紫原のお母さんだったら家計がどうなってるかなー。とか考えたりして、手元にあるボールを洗う
「このコップも洗ってほしいっス!紅茶入れるのに使うんで!」
『ん』
涼太から受け取ろうとするとコップが欠けていたのか指先に痛みが走る
驚いて握力を入れられずコップが重力に従い落ちていった
ああ、割れてしまうと手を伸ばすが追い付けず綺麗なコップはバラバラになる
「わ、名前ちん平気~?」
『…指切れただけかな。先生ごめんなさい、コップ落として割っちゃいましたー』
「欠けてたんス!で指切っちゃったんス!」
「じゃあこの絆創膏はって、後片付けは先生がやっておく」
『お願いしまーす』
家庭科担当の先生から故意でないにしろ気を付けてと注意をうけつつ絆創膏をもらい、貼る
血がじわじわと滲んでいて、あまり良い気分にはならない
「名前ちーん大丈夫?クッキー焼けたよ~」
『大丈夫、キツネ色に焼き上がってるから完成かな』
「本当っスか!?早く見せてほしいっス」
『…食べるんじゃないんだ』
「今甘いもの禁止中なんス」
「じゃオレ食べて良い~?」
「ダメっスよ!黒子っちにあげるんスから!」
あたしより女子力の高い会話に笑いながらお湯を沸かして紅茶を入れてクッキーを食べた
残ったものはラッピングして好きな人にあげるだのなんだの周りの女の子が喋っていたが、涼太は「絶対黒子っちにあげる」と息巻いていた