第13章 彼の誕生日と
暗くなってきたため光に照らされているところしか肉眼で確認できない雪をぼーっとみつめる
それでも相変わらず少量だが降り続けており、皮膚に当たると体温で溶けてしまう
『…』
溶けてしまうのがなんだかもったいなくて、助けたい気持ちがあるのだが触ってしまうと溶けてしまうため何もできない
『もどかしい、なぁ』
再び息を吐くと先ほどよりも息が白く変化し消えていく。雪もほんの少しだけ強くなってきた気がするが、それでも積もることはなさそうだ
ふと背中に暖かさを感じて、自分の腰に両腕が回っていることが確認できた
後ろを確認するとりんごのような真っ赤な髪が見えて征十郎だと分かる
『急に抱きつくなんて他の子にしたら悲鳴あげられちゃうよ』
もちろんそれは良い意味であり、されたらそのあとは失神するだろう
「こんな冷えきってしまって、呼んでくれれば良かったじゃないか」
『なんか体育館の中、居づらくて』
「さすがに外では寒いだろう」
『でも図書室とかもう空いてないだろうし』
あたしの背に覆いかぶさるようにしている彼は練習着のままだ。そっちの方が寒そうだと思っていると、いきなり背後からあたしの手を自らの手で覆う
昔は同じくらいだったのに、いつの間にこんなに大きく、男の人の手になってしまったんだろうかなんて夏祭りに思ったことと同じことを考えた
「指先まで冷えているじゃないか」
『別に平気だよ。乾燥してもあとで雪さんにハンドクリーム貸してもらって塗るし』
「そういうことじゃないだろう」
少し感覚のなくなっていた指先が征十郎の体温のおかげか、もしくは自分自身の体温が別の意味で上昇しているのか
なんの理由かは分からないが、冷えた体はだいぶ暖まってきた