第45章 里帰り$
受け身の体勢が取れない。
足場にしようにも、近くの崖までは距離がある。
俺は鬼狩り以外の場所で死ぬのか……
白藤の目の前で……
「義勇さん!!」
白藤が声を上げる。
伸ばされた手は空を切る。
そう思った、が…
「血鬼術・魅了!」
目の前に居た白藤の姿が一瞬にして変わる。
普段は相手に幻術を見せる技だが、今回白藤は自分の体自体を変化させた。
そう、彼女は自らの意思で技を進化させたのだ。
瞬き一度の間に、彼女は冨岡と同じく柱の一角を担っている宇髄天元に姿を変え、冨岡の腕を掴むと勢いよく体の向きを転換させた。
ガッ、ぐるん。
冨岡を対岸に投げ飛ばし、術を解く。
高さからして人が落ちた場合は即死でも、鬼である私ならば助かる見込みはある。
鬼は首を斬られない限り死なない。
あ、でも陽光に当たったらまずいかも……
でも、これが今生の別れになっても、
彼が無事なら、私は後悔しない。
「生きて…」
白藤はそのまま崖下に吸い込まれていった。
-了-