第80章 家族の形$ 其の二
蝶屋敷から少しだけ歩くと、湖が見えてきた。
「懐かしいです、ここにはよく姉と来ていました」
時には鍛錬に使い、時には花見に使い、息抜きをするのに丁度良い距離にあるこの湖はしのぶにとって思い出の地であると同時に、心の拠り所だった。
カナエの亡き後では、ここに来るのはいつも一人だった。
恐らくカナヲも知らないのでは無いだろうか。
「どんな姉ちゃんだったんだ?」
「え?」
「すまねぇ、俺には兄弟が居なくてよ。居たらどんなもんなんだろうと……いや、不謹慎だな……忘れてくれ」
「そんな……こと、無いです。私の姉は柱で、花の呼吸の使い手で……とても芯の強い人でした」
しのぶの言葉は途切れ途切れだったが、鋼鐵塚はそれを静かに聞いていた。
「優しくて美人で、でもどこか抜けていて……変な所で誰よりも気が回るような、そんな一面があって……私なんかより治療も上手くて、沢山の人に好かれてて……」
そんな姉が羨ましくて、大好きだけど、大嫌いだった。