第71章 向かう白、揺蕩う藤色
「ところで伊黒。この近くで白藤を見なかったか?」
「さてな。俺は甘露寺とお前にしか会っていない」
「甘露寺は?」
「私も伊黒さんに会うまで誰とも……あれ?」
「どうした?」
「私、琵琶の鬼を追いかけてて、途中の通路で見かけた気がする……」
あれは、確かに白藤だったはずである。
でも、彼女の傍にいたのは冨岡ではなく、紫暗色の着物を纏った武士だった。
甘露寺の発言に二人共、とても驚いた表情を見せる。
「マジか!?誰だよそいつ!!」
「えぇっ、知らないですって!私も聞きたいですよ!!」
このままでは埒が明かないので、伊黒が宇髄を問いただす。
「宇髄……それはともかく。何で今白藤なんだ?」
「御館様と一緒に爆発に巻き込まれた、ひなき様とにちか様はまだ息があった。間に合うようなら連れてきてくれと煉獄の父君からのお達しだよ」
「槇寿郎様がこちらにいらっしゃるのね」
「酒浸りだったはずだが……刀は振れるのか?」
「あぁ、心配要らねぇよ。さっき見事な大立ち回りしてたからな」
「ほう……」