第71章 向かう白、揺蕩う藤色
「煉獄さん?」
「行こう」
煉獄さんは一瞬だけ、悲しさ滲ませたような表情を浮かべていた。
その訳は俺には分からない。
けれども、俺の前を歩いてくれる煉獄さんの背中が、先程よりも立派に見えるのは気のせいでは無いはずだ。
俺も心を強く持たなくては。
『心を燃やせ』
あの日、煉獄さんが言った言葉だ。
あの日を境に、俺も沢山考えて、沢山修練を積んで来た。
あの時の悔しさも憤りも全部……
無惨を倒すこの日の為にあったことならば……
「はい!」
今度は俺も胸を張って前に出る。
守られるだけでなく、守るために前へ。
俺も、煉獄さんのように強くなりたい。