第70章 咲くは朱なれど散るは白
あぁ、そうか。
「真に私を殺すに足る男はきっと、お前の様な男なのだな。水柱、貴様の名は?」
「……冨岡義勇」
無惨と冨岡の睨み合いに、炭治郎が割って入ろうとするも……
「ぎ……」
「竈門少年。手出しは無用だ」
肩に乗せられた手に、行く手を遮られてしまう。
「煉獄さん……」
「竈門少年、今は見守ろう」
「そうだぜ、竈門。割って入れば火傷じゃすまねぇぞ」
「宇髄さんまで……」
「しっかしまぁ……あの冨岡がねぇ……」
随分と、変わったもんだ。
周りの雑踏を意にも介さず、無惨はただ冨岡の思念を読み取ろうとする。
この男が今の白藤にとって大切な者であることは分かっている。
だが、私の事を思い出し、声をかけてくれたのも、間違いなく彼女だった。
白藤。
未練がましいが、お前と離れたくないと胸の奥が悲鳴を上げるのだ。
こんな感情は鬼となった時にとうに捨てたはず……
「私を殺せ、冨岡義勇。……この因果を断ち切ってくれ」
そう言った無惨の瞳は、今までで一番人間に近いものだった。