第70章 咲くは朱なれど散るは白
「五月蝿い、五月蝿い!どいつもこいつも使えない!!出来損ないのデク人形共が!!」
蘆屋道満は紙片を握り締めたまま、再度呪言を唱えようとした。
「貴様の思うようにはさせない!」
「鬼舞辻……貴様……」
「貴様との悪縁は今この場で全て断ち切る!!」
右手で刀印を作った無惨が指先に霊力を込めて蘆屋道満に向けて降り下ろす。
その動きに呼応するように無惨の背後から黒龍が現れ、道満に向かって飛んで行く。
大きく口を開いた無惨の黒龍は迸る炎のような光を道満に吹きかける。
「息吹、その息吹よ、神の息吹となれ!!」
「止せ!!」
破邪の呪文だ。
常闇を身に纏う蘆屋道満にはその光は脅威でしかない。
嫌だ。
死にたくない。
私は、まだ成せていない。
成せていないのだ……