第70章 咲くは朱なれど散るは白
「炭治郎……」
「冨岡さんは……白藤さんがこのまま死んでしまったらって、考えないんですか…!!」
「考えた……でも、このままでは他人を傷つけてしまう。そうなれば白藤本人が一番辛くなる……それを俺は知っている……」
近くで見てきた。
他人のことで一喜一憂し、その度に彼女は力が足りないと自身を責めていた。
そんな彼女に惹かれた。
冨岡が自分から誰かを『助けたい』と思ったのは、白藤が初めてだった。
任務の時であっても、その場にいる人を助けるという認識しかなく、一個人だけを護るという固執は無かった。
「俺は……白藤さんが好きでした。彼女の笑顔が好きだったから……でも、その笑顔は……みんな貴方に向けられるもので、それがとても悔しかった……」
分かっている。
これはただの嫉妬だ。
「俺の事も、見ていて欲しかった……」
それが、紛れもない望みだった。
「……何故だ……?」
小娘も、炭治郎も私の手駒にしていたはずなのに……
「蘆屋道満。白藤が欠けた時点でお前の企みは潰えた。このまま調伏してやる!」