第70章 咲くは朱なれど散るは白
この世を作り直す。
魔都であった頃の京の都ような、幽世(かくりよ)と現世(うつしよ)の境を行き来できるあの空間を。
無限城を媒介に日ノ本全体を常闇へと変える為の足がかりとして、鬼舞辻を、鬼の始祖を作り出したというのに……
全て無駄だと言うのか……
あってはならぬ……
平穏など、ぬるま湯のようなものだ。
浸かっているうちに誰もが腐っていく。
皆の笑顔が見たい、幸せになりたい。
綺麗事を言う者ほど、利己的で、自分本位だ。
いつの世も人は平気で嘘をつく。
あの時だって……
「安倍晴明、貴様とはまたいずれ……」
「道満よ、もう止さぬか?」
「何を言う……所詮私と貴様では……」
「道満よ、其方も分かっているのだろう?いつの世も移りゆく事で変わっていく。流れには逆らえぬのだと……」
「認めぬぞ!よもや、貴様からそのような世迷言を聞くとは……安倍晴明も落ちぶれたものだ!俺は俺の道を行く。貴様のように日和見爺になるつもりは毛頭ない!!」