第70章 咲くは朱なれど散るは白
「……起きたら、二人で……祝言を、あげよう……」
彼女には、もう聞こえていないかもしれないが。
俺が、そうしたいのだ。
「………冨岡さ……」
「胡蝶。白藤を、安全な場所へ……」
「良いんですか?」
彼女がそのまま、灰になるかもしれないのに。
「白藤は寝ているだけだ。後で起こす」
冨岡が胡蝶に白藤の頸と体を預け、身を翻す。
胡蝶が丁寧に彼女の体を寝かせ、首を元の位置に。
穏やかな、寝顔だ。
祝言の夢を見ているのかもしれないと思うほどに。
本当に。
そう、まるで……
「藤の花嫁のようだ……」
「煉獄……?」
「宇髄。俺は失恋したようだ……」
涙を堪える煉獄の肩に手をやって、宇髄は呟いた。
「安心しろ。お前だけじゃねぇよ、アイツ狙ってたのは……」