第70章 咲くは朱なれど散るは白
暖かい……
頬に落ちてきた温かい雫で私は現実へ引き戻された。
「義、勇……さん……」
「……白藤」
「そんな、に……泣い……どうし……?」
あれ?
体が、動かない……
彼が泣いているのに、指一本すら動かせない。
あぁ、やはり血鬼術の使い過ぎか……
「義勇、さん……私、無理……し過ぎ……みた……で……眠……です」
「……あれほど、無理は……するなと……」
「ごめ……なさ……起き、たら……二人で……」
私が起きたら、きっともう、全てが終わっていて。
いつもの様に、貴方が遅いぞと笑ってくれるのでしょう。
私は貴方の手を取って、すみませんて笑いながら髪を撫でて貰って。
それから、優しく抱きしめてもらうの。
義勇さんの腕の中は、すごく居心地が良いから、私はすぐに眠くなってしまうの……
「……二人で、何が、したい……?休暇を、取って、何処かに……」
彼女は、眠ったようだ。
「………白藤?」
幸せそうに、微笑んでいるようにさえ見えるその寝顔は……