第70章 咲くは朱なれど散るは白
皆その場から動けなかった。
「うぅがっ!」
鬼化した炭治郎は白藤の首が飛ぶ光景を目の当たりにして唸り声を上げた。
憎悪を向けるような視線でこちらを睨め付け、迫ってくる。
その先にいるのは白藤の首を抱きしめている冨岡だ。
やはり、彼の望みも彼女だったのだろう。
「お兄ちゃん!もうやめて!!」
「禰豆子ちゃん、危ない!!」
駆け寄ってきた禰豆子と善逸を、腕の一振で薙ぎ払った炭治郎に。
「起きて!炭治郎!!」
カナヲはしのぶから預かった薬を炭治郎の体に打ち込んだ。
「がああ!!」
カナヲの背中に炭治郎の爪が刺さる。
「ああっ!!炭、治郎……」
「ぐ、うぅ……!……せ!!」
離せ……!!
何故……
あの人が……彼女が何をした……