第70章 咲くは朱なれど散るは白
あぁ、疲れた。
このまま眠ってしまいたいけれど……
ここは、何処かしら?
薄暗い回廊を宛もなく歩いていた彼女は、ふと疑問に思った。
ここはとても静かで寂しい場所だ。
どこへ向かえば、出られるのか皆目見当が付かない。
そもそも、行く宛てなどあっただろうか?
音も人の気配もしない、空虚な世界。
「………」
誰か、来ないかな……
その場に座り込んだが何の気配もしないため、自分の心音だけが響いていた。
しばらくじっとしていたけれど、もう、待つのにも疲れてしまった。
起き上がる気力も無くなって、彼女はそのまま目を閉じた。
『………!!』
遠くで誰かに呼ばれた気がしたが、足も手も動かない。