第70章 咲くは朱なれど散るは白
ただ……
相手はあの炭治郎である。
嘘が苦手で、何事にも真っ直ぐで。
妹を人間に戻す為に鬼殺隊に入隊した彼が、そう簡単に鬼になるような、意思の弱い人間ではなかった。
「何でだよ、炭治郎!!」
善逸は叫んだ。
泣きたくなるくらい、優しい音のしていた彼の心が揺れる何かがあったのならば、それはきっと……
彼女と、白藤と関わりがあるのだろう。
善逸は炭治郎の想いを知っている。
勝ち目がないと分かっていても、どうしても彼女が好きなのだと言っていた。
炭治郎の言葉には嘘がない。
だから……
白藤さんを斬らなきゃ、炭治郎はきっと戻って来ない。
善逸はそう思った。