第15章 私が望む君の好き/那月(うたプリ)
油断してるといつもこうだ。
「ななしちゃん!」
「うわっ」
「やっぱりななしちゃんは可愛いです」
身長は女子の平均より低め。
そんな私は、彼のその言葉通り『可愛いと思うもの』にもれなくばっちり引っ掛かるらしく、可愛いものが大好きで大好きで大好きな彼――四ノ宮那月に抱き締められて愛でられることが多々ある。
それは現在進行形で。
正直、中々な力で遠慮なくぎゅーぎゅーされて苦しいやらなんやらなので、あまりこの抱擁はありがたくない。
だから抱き締められる前に避けねば!と彼といるときはそこはかとなく警戒しているのだけど。
やはり常に気を張り続けるなんて芸当は少し無理があって、たびたび緩んでしまうときがあるのである。
そして、そんな一瞬の油断を、彼は見逃さない。凄腕スナイパーかなんかかちくしょう。
「なっちゃん離して……」
「もう少し、もう少しだけ」
「じゃ、せめて力緩めて……」
力なくぐったりした様子での抗議に、彼はようやく力のいれすぎに気付いたようだ。
ごめんなさい、とあわててその力をゆるめる。ただし、やっぱりぎゅーは継続で。
これはもう、彼の気がすむまでぎゅーぎゅーの刑に処されているしかないようだ。いつものことだけど。
可愛い、可愛い、と頭上から聞こえる。
これもいつものことだけど、いつになってもそう言われるのがなんだか恥ずかしい。でも嬉しくもある乙女心がちょっぴりあったりなかったり。なんて。
「……なっちゃんてば、ほんとに『可愛いもの』大好きだよねー」
「はい!ななしちゃんも可愛いから大好きです」
大好き。
その言葉に、一瞬大きく鼓動が跳ねた。
その事実を無視して、なんでもないようにゆるりと笑顔を作ってやる。
「そっかー、ありがと。私もなっちゃんのこと大好きだよー」
「本当ですか?」
「うん。なっちゃん大好きー」
ずいぶんと軽い調子の私の『大好き』の言葉。
笑い混じりでちょっと冗談じみていて、そこにはある種の熱が含まれてない。
大好きだと言われた言葉に同じ返答をしただけの、それ。
嘘じゃない。彼が大好きなのは本当だ。
ただ。
――ただ、
「僕も、ななしちゃんのこと、本当に、本当に大好きです」
おそらく、そう言って微笑んでいるだろう彼の『大好き』とは違う種類のものなのだ。