第11章 それでも彼女が笑うなら/ゲン(ポケモン)
「ルカリオ!」
相棒の名が私のものじゃない凛とした愛らしい声で呼ばれた。ああきっとあの子が来たのだと振り返れば予想は的中しており、早くも我が相棒を抱きしめているその姿が目に入った。
「久しぶりだね、ななし」
「久しぶり!ゲンさん!」
花も恥じらう、というよりは花さえ綻ばしてしまいそうな満面の笑みで私の方へ向く彼女はルカリオは離す素振りを見せていない。
それはルカリオが彼女の大のお気に入りということにある。
今も、すでに満面の笑みをルカリオの肩口へと押し付けて幸せそうにほお擦りをしていた。
「あー、もう、本当ルカリオって可愛いなあ。もふもふ気持ちよすぎる!」
「ななしは相変わらずだね」
「はい!相変わらずルカリオにゾッコンです!」
ラブです!とそう続ける彼女に思わず苦笑がもれる。
初めて会った時から確かこうだったなと昔のことをを少し思い出したからかもしれない。
そう、昔からこうだ。
彼女の視線の先にはいつだってルカリオがいる。別段それに不満があるわけではない。
自慢の相棒を溺愛する彼女もそんな彼女に困りつつも満更でもない様子を見せるルカリオもそれを微笑ましく見守るだけの自分の立場も気に入ってさえいた。
ただごくたまに彼女が私を見てくれてはいないのだとそう思い知る時があり、そしてそれはどうしようもなく私に焦燥感をあたえていたのだが。
これがどういった理由できているものか推測もできたがそれはあえてしないことにしているのは、今のこの絶妙なバランスで保っている関係を崩したくないためか。
自分は存外、意気地無しだとそう自嘲。だが心地のいい関係を自ら壊そうとするほど馬鹿でもなかった。