第10章 私と君の身長差/音也(うたプリ)
放課後、Aクラスの教室。
今日が締切の提出物を前にうんうんと唸っている音也と、なんとはなしにクラスに残っていた私。
気が付けば二人ぽつんと取り残され、級友たちはみんな残らず帰っていった後だった。
「キスしやすいのが12センチ、理想のカップル15センチ、ぎゅっとしやすいのが32センチ、だってさ」
うんうん唸る音也の声をBGMにひたすらスマホをいじっていた私は目線を手元に向けたまま、後ろの席に座る音也へとそう投げ掛けた。
脈絡もない唐突なそれに、唸りを止めた音也は目を丸くして一言。
「何が?」
そんな想定内な返答に、徐に後ろを振り向いてスマホの画面をその眼前に突き付けた。
そこに映るのは某呟きSNS。友人からのRTで回ってきたどこぞの誰かの呟きだった。
「この身長差でできること……?」
「ん」
少し面食らった様子で、でも内容はしっかりと読んだらしい。
思わずと言った感じに口にした音也の言葉通り、その呟きは身長差別の特徴がまとめてあるものだった。
ちゅーをするなら12センチ。
お似合いなのは15センチ。
ぎゅっとするなら32センチ。
それぞれそのぐらいが丁度良いのだとか。
「うん、で、これがどうしたの?」
「いや、別に。ただの話のネタにでもなればと」
「それで、これをネタに俺たちは何を話せば」
「……何でしょうね?」
ぶっちゃけ、それが目に留まって思いつきでふってみただけのネタだった。まるで考え無しだったのが最後の返答で伝わったらしい。呆れを含ませたため息が一つ。その目が、そんなことで邪魔しないでよと言っている。
音也を唸らせていた提出物をちらりと一瞥して、進んでもいないものに邪魔も何も、と思いつつもそれじゃあその邪魔をしてやろうかとそのまま話を続けた。