第1章 俺が彼女を好きになる迄の話。
□悪夢が運ぶ幸せ
◆◆◆◆◆◆
「……。どうしたんだ?」
「ひひっ、抜け出してきちゃった。」
けれど、その夢を見た日は何故か良い事が起こるんだ。それを”逆夢”と言うらしいが、今回はその良い事をが運んで来たらしい。
「大丈夫、しのぶには許可取ってきた。」
夕刻には戻らないとならないけどね。と言いながらは小ぶりのスイカを包丁で_パカンと割る。
「最近あんまり食べてないでしょ?西瓜なら殆ど水分だし。ちょっとなら食べれるんじゃない?ね?」
「あ、うん。ありがとう。
………けどよく見つけたなぁ。季節外れだ。」
秋口の今、良く西瓜なんて見付けてきたなと俺が目を丸くしていると、は俺の顔を覗き込んで__クスクス。と機嫌良さそうに笑った。
「八百屋のおじさんに頼んでおいたの。
小ぶりでも良いから見つけたら取っておいてって。けど流石にコレが最後だろうねぇ。だから贅沢。」
そのお願いは俺の為にしてくれたのだろう。鬼喰いのせいで最近俺は普通の食事をしなくても問題無い。そんな身体になっていて、それに付随して食欲も殆ど無くなっている。そんな俺を思っての行動。
の優しさに__ドクン、と心臓が鳴った。