第1章 俺が彼女を好きになる迄の話。
「…に、兄ちゃん?」
ガタンっ。と大きな音が兄ちゃんの部屋から聞こえて、俺は慌てて部屋へ向かい部屋の扉を開けた。
「…玄弥……っ…逃げろ…。ココか…ら…。」
何故か自分に刃を向けながら苦しそうにそう呟く兄ちゃんの目は、鬼のように黒くなっていた。
「………クソッ…!!………ッ。」
俺は何が起こったのか分からずに、唖然とそれを見つめていると腕が思う様に動かせないらしい兄ちゃんは俺に日輪刀を投げつけて唸るように叫んだ。
「殺せェ…!!…良いか、俺ァ…っ…鬼だ…!!」
「……違う…違うよ。………兄ちゃんだ…。」
「まだ俺のうちに殺せって言ってんだよッ!!」
「やだ…嫌だぁあっっ!!!」
______そんな、目覚めの悪い夢。
愚図の俺は兄ちゃんの『俺のうちに殺せ。』という願いも叶えられず、挙句最後まで守ろうとしてくれた自分までも兄ちゃんに殺させてしまう。
死に際に自我を取り戻した兄ちゃんのお陰で、何とか兄ちゃんの息の根は止められたが、最後は2人で灰になって消える。この夢はいつも最後がソレだ。
何て、救いのない夢なんだろうか。自分の愚図度合いに腹が立つ。それを思い知らされるそんな夢。