第1章 俺が彼女を好きになる迄の話。
「…兄ちゃん!?兄ちゃんっ!!」
「…るせぇなァ…。何でココに居るんだよ。」
「な、なんだお前、風柱様の弟なのかよ…。
あー、どうりで似てるわけだわ………納得。」
現地には傷だらけの兄ちゃんがいて、俺は青ざめながらその治療をした。隠がいくら治療しようとしても手をつけさせないからそういう役回りになったんだ。
「病床が足んねェだろ?俺ァ、屋敷へ帰る。」
「駄目です。…というか何で歩けるんですか。」
「…山ほど動けねェやつがいんだろ。そっち回せよ。…俺ァ…あー、ココじゃ落ち着かねェし。」
自分もボロボロの癖に怪我人の運搬まで手伝った兄ちゃんは、病床の数まで気にしている。確かに優しいが、怪我人は放っておけない。と、胡蝶さんはため息混じりに俺にお願い事をした。
「………玄弥君。今晩はお兄さんのお世話係です!
良いですか?決して無茶をさせぬよう、死ぬ気で見張っていなさい!!……分かりましたね?」
「え、あ…はい。分かりました。」
「オィ、胡蝶…。」
「不死川さんも…………分かりましたね?」
「………チィッ、帰るぞ…玄弥ァ…。」
「…あ、うん………違う、はいっ!!」
兄ちゃんは少々不満気だったが、お互いの妥協案だと飲み込んだんだろう。俺を連れ屋敷へ戻った。
__いつも状況が変わるのは夜が深くなってから。