第1章 俺が彼女を好きになる迄の話。
□俺が1番嫌いな夢
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「………久々だな…。この夢。」
その日は最近は見なくなっていた俺が1番嫌いな夢を何故か久しぶりに見たんだ。
「………顔、洗うか。」
いつでもこの夢はやけに鮮明で、とても夢見が良いとは言えない。頬の涙の跡を消そうと俺は井戸に向かった。
「………冷たっ!!…今朝は冷えるなぁ…。」
その夢は、消えた兄ちゃんを探し出した所から現実とは少し違う流れになる。
「(………また、2人で灰になっちまった。)」
俺は兄ちゃんを探して現実と同じように1人で彷徨い歩くのだが、夢の中では随分簡単に兄ちゃんと再会を果たし直ぐに和解をする。
それから鬼殺隊に入るなと言われるのだが、俺はソレがどうしても嫌で駄々をこねる。
ソレに困り果てた兄ちゃんが、蝶屋敷へ俺を連れて行き、『コレも鬼殺の為の仕事だ。』とそこで俺を働かせる手筈をとった。
男手の居ない蝶屋敷での仕事は手が足りぬ程あるし、運び込まれてくる傷ついた隊士を看病したりして、俺はコレも立派な鬼殺の糧だと納得して必死にその仕事をこなしていた。
そんなある日、怪我人が多すぎて現地に行く隠が足りないから蝶屋敷の人間を借りたいと聞いた俺は、唯一男の俺が行かない訳にはいかないだろうと、隠に連れられて怪我人が多発している現場に向かった。