第1章 俺が彼女を好きになる迄の話。
「だから、恋仲とか…そういう関係じゃないよ。
私は悲鳴嶼さんを守りたくて、悲鳴嶼さんは私を死なせないようにしてくれてる。…それだけなの。」
そう言いきって立ち上がったの腕を、俺は__ガシッとつかんだ。
「玄弥君?」「…ごめん。」
不思議そうに見開かれた黒目を何故だか見ていられなくて、俺はを引き寄せて腕の中へ閉じ込めた。
「が、消えちまいそうだったから。」
「ふふっ、そんな頼りない顔…。してたかぁ。
そうだよねぇ、してたよね。……ごめんね?」
声色はもう何時もので、『心配させてごめんね。』と俺の背を叩く手は酷く優しかった。
「玄弥君はさ、…私の自慢の弟弟子だよ。
こんなに優しい心根の子、私は見たことないや。」
なんで俺は、その言葉に涙を流したのか。なんでこんなに息が苦しいのか。訳も分からないままを抱きしめ続けた俺は、この日初めてを守りたい。と心の底からそう思ったんだ。