第1章 俺が彼女を好きになる迄の話。
「…私が悲鳴嶼さんの所に行く時は、決まって雨が降ってるでしょ?」
「え、…あぁ。そう言えば梅雨の時期によく部屋に行ってたよな。…それが。どうした?」
「私が初めて鬼に会ったのは、雨の夜だったの。」
そう言っては淡々と自分と鬼と家族の話をした。から家族の話を聞いたのはコレが最初で最後だ。
「鬼がね…雨の夜に全部終わらせてくれたんだ。
私は感謝さえ覚えたよ…。このまま私も胃に入れて
この世から消し去ってくれ何て思ったの。」
は両親から酷い虐待を受けていたらしい。
そんな両親を食い殺した鬼は、にとってまるで救世主にでも見えたのだろう。自分を食おうとする鬼をは拒みもしなかったそうだ。
「けど、その鬼を突然現れた悲鳴嶼さんが切って、
それで…、その鬼は灰になったの。
当時の私はソレが理不尽に思えてねぇ…。
勢い任せに罵倒しながら殴りかかったんだ。」
「え、悲鳴嶼さんに!?」
「うん、ふふっ、本当…命知らずだよねぇ。」
やっと終われる。希望も何も無いこの地獄が、目の前の鬼のおかげで終わるんだ。そんな風に思った当時のにとって、悲鳴嶼さんの行動は希望を消された。そんな風に思えたのだろう。