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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第29章 《閑話》とあるアイドルプロデューサーの休日




流行りの音楽の合間を縫って、近くのテーブルから話し声が聞こえて来る。
どうやら 私達を遠目で見つめて、男性2人が何やら相談をしているようだ。


「声かけてみる?向こうも2人みたいだしさ」
「うーん、どうすっかなぁ」
「なにー?お前ビビっちゃってんの?ナンパの1つや2つで」
「馬っ鹿、違うわ!たしかに1人は美人だけどさぁ、もう1人は

ブスじゃん」


——大丈夫だ。こんなのは、慣れっこだから。


嫌な男どもの、心無い言葉の棘も。聞こえないふり。
だって、実際 私がブスなのだから仕方がないじゃないか。彼らは悪くない。

さも満足そうに、ほくそ笑む彼女の顔も。見えないふり。
だって、私が引き立て役になる代わりに、友達のふりをしてもらっている。彼女は悪くない。

まるで余興を見るみたいな、烏龍王子の視線も。気付かないふり。
きっと、貴方みたいな人には私の気持ちは分からないから。

生まれた瞬間に、人が羨む物を全て持っていて、きっと失った物などないのだろう。
それだけ美しい見た目ならば、どれほど人生が楽なのだろう。

いいなぁ、羨ましいなぁ、私には 美しかった事なんて 一度もないのに。


あ……。やばい。私、いま 泣きそう。


「まぁ、とりあえず声かけてみっか」
「そうしよ!男2人より全然マシだし」


「ねぇねぇ君達さぁ、2人でいるん」

『すみません。彼女達には、私との先約がありまして』


耳を、疑った。

隣のテーブルからやって来て、ナンパの邪魔をしたのは なんと


王子様だった。

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