第54章 もう全部諦めて、僕に抱かれろよ
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「僕達の子供は、絶対に可愛いよね」
『馬鹿…言わないで』
私は、千の腕の中で悪態をついた。
『そんな、可能性…ゼロだから』
「なんだ。やっぱりそうか」
本気で残念そうに、千は乾いた笑いを零した。
以前、彼には話していたと思う。私がそういう薬を所持していること。
TRIGGERのプロデューサーになってから、常時飲む事はなくなったものの。いつまた必要になるか分からないので、常備はしているのだ。
というか、今がまさにその飲み時である訳だが。
「エリちゃんが そういう抜け道使ってなかったら、絶対に1発で孕ませる自信あるんだけどな」
『トップアイドルが、1発で孕ませるとか…言うもんじゃありません』
きっと外の気温はそれなりに低い。でも こうして2人でくっついていると、温かくて心地良くて。寒いなんて全く思わなかった。
私は一応 受け答えをするものの、睡魔に身をゆだねんとしていた。
その ほとんど無意識の状態で、私はまた彼の銀髪に指を絡めていた。
「エリちゃんは 本当に長髪が好きだな」
『……ん、…さらさら…気持ち、良い…。好き、だよ。長髪…イケメン』
「!!
ははっ、君、もうほとんど自分でも何言ってるか分かってないだろう」
だんだんと、千の声が遠くなる。
「でも、そうか…。長髪イケメンね。
エリちゃんには、僕の元相方には会って欲しくないかな。だって、下手したら僕よりもイケメンで長髪だし…
昔 一緒に音楽やってた男で、大神万理っていうんだけど」
『………』すぅ
「…寝ちゃったか。
—— ねぇ、僕を 置いていかないでよ。夢の中でも、君と一緒にいたいんだ。せめて 今夜くらいは」