第1章 花信風 滝澤 /平子
それから数日が経ち鈴屋班はスカルマスクの捜査にあたった。
私は、あの日見た政道さんの姿が忘れられなかった。
気持ちにまた少し穴が空いてしまった。
什造先輩はそれに気付いている。
2人で篠原特等の元へお見舞いのお花を持って行ったときに什造先輩に言われた言葉。
「ぼくは、居なくならなかったですよ?は、の心を取り戻すことを約束しますか?」
「…心を取り戻す…」
「抱えてること、は沢山抱えてしまうので僕は心配していますよ?」
「…へへ、私、什造先輩のお母さんのはずなのにダメダメですね」
「…お母さんはちょっとお休みして、は自分の心と少し向き合ってください」
「…はい、了解しました」
スカルマスクのボスの駆逐の際、同行しようとしたら什造先輩にたちは今日はもう上がるよう言われた。
私だけに耳打ちしてくれた内容だと、阿原くんに自信を付けたいんだとか。
「わかりました、くれぐれも」
「無茶はするな!でしょう?はお母さんお休みしてくださいって言ったのに~」
「そうでしたね、気をつけます」
什造先輩と阿原くんと別れ、私たちは一度支部に戻り報告書などの作成に取り掛かる。
間もなくして、什造さんたちが駆逐成功との連絡が入り一安心した。
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オークション掃討作戦が終わったあのあと、すぐ、丈さんはノーフェイスと交戦したと耳にした。
左腕の傷が酷いと聞き、病院にいる丈さんに会いに行った。
丈さんに会った瞬間、私は堰を切ったように泣いてしまって、倉元さんたちが見ている中丈さんに抱きしめられた。
「丈さん…う、うう、腕…」
「大丈夫だ」
「大丈夫じゃありません…」
「別にこれくらい大した事じゃない」
「丈さんに何かあったら耐えれないって言ってるのに…」
「…」
涙が止まらない。
丈さんのことが心配な涙。
丈さんが無事で良かったって涙。
什造先輩が無事だった涙。
政道さんが生きててくれた涙。
政道さんが喰種になってしまった涙。
政道さんが真戸先輩だけを見つけてた涙。
いろんな涙。