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星降る丘【NARUTO】

第22章 愛ゆえの我儘



「ちょっと、ヒトの奥さんに勝手に触らないでちょーだい」

わたしたちのうしろには、いつものように背を丸めて立つカカシがいた。
仕事中のはずのカカシの登場にわたしは目を丸くしてしまう。

「じゃあ、もうちょっとちゃんと捕まえててくださいよ」

無表情に見つめ合うふたりのピリピリした空気にわたしは一人焦ってしまう。

「カカシ!誤解してるよ!
ヤマトはわたしが泣いちゃったから慰めてくれてただけで……」

カカシはわたしに向き直ると、ヤマトの腕を掴んでいた手を離し、わたしの手首を取る。
そして、テーブルの上にわたしの食べた定食の代金を置くと、グイッとわたしを立たせ、何も言わずに歩き出す。

「ちょ、ちょっと待って!カカシ!!」

スタスタ歩いて行くカカシに引きずられるように連れて行かれて、焦ってヤマトを振り返る。

「ヤマト、ごめんね!
今日は一緒にごはん食べてくれてありがとう!
またね!」

「はい、また」

そう応えるヤマトの笑顔はいつもの笑顔で……。
涙を拭ってくれたときの表情はわたしの気のせいかとホッとする。




雨はいつの間にかあがっていて、店に傘を忘れてしまったことに気づく。
カカシは無言で歩き続けていて、斜め後ろからじゃ表情は分からない。
さっきは突き放しておいて、今度は勝手に連れていかれて。
カカシの身勝手な行動にだんだんと腹が立ってきて、わたしは立ち止まり、手首を掴んでいたカカシの手を振り払った。

「離して!!」

気持ちが昂るとまた涙が出そうになり、グッと奥歯を噛み締めて堪える。

「わたしはカカシの所有物じゃない!!
勝手なことしないでよ!!」

目に涙が溜まっていき、視界がぐにゃりと歪む。

「サク……」

カカシがわたしを呼ぶ声が思いがけず悲しみに満ちていて、わたしは思わず瞬きをした。
その拍子にこぼれ落ちた涙を、カカシの手がそっと拭う。

「カカシ……?」

うるむ視界で懸命にカカシの顔を見る。

「さっきは、サクの気持ちちゃんと聞かずに突き放して、ごめん……」
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