第22章 愛ゆえの我儘
「もう、いいよ。
不毛なのは、わたしも分かってるから……」
カカシのしゅんとした顔を見て、さっきまでの怒りが急速に冷めていく。
冷静に考えれば、カカシは忙しいのにわたしを追いかけて探しにきてくれたんだ。
きつい言葉を言っちゃったから?
走って出て行ったから、またお腹が張ってないか心配だった?
きっと両方だ。
この人の優しさを、わたしは嫌というほど知っている。
「サク、今日はなるべく早く帰るから、寝ないで待っててくれる?
ちゃんと話そう」
「うん、わかった……」
カカシは最近は夜中まで帰ってこれない。
妊娠して眠気がすごいわたしは、カカシとまともに話せていなかった。
うなずくと、カカシがちょっとだけ微笑んだ。
わたしも自然に微笑み返すと、カカシがあたりを見回して、今度は指を絡め繋ぎ、人気のない路地裏へと向かう。
「カカシ?どこ行く……んっ?!」
わたしが尋ねるより早く、物陰でカカシが口布を素早くずらし、キスをする。
久しぶりの長いキスに息苦しさを感じた頃、ようやく唇が離れた。
「サク、かわいいんだから、もっと警戒心もってよ……」
間近で見つめてくるカカシの濡れた瞳から目が離せない。
警戒心って……。さっきのヤマトのことを言っているのだろうか?
「だから誤解だよ。
ヤマトはわたしが泣いちゃったからその涙を拭こうとしてくれただけで……」
「テンゾウは、昔からサクのことずっと好きだから。
それにテンゾウだけじゃない。
サクが任務のために火影室に出入りするようになってから、サクのこと知らない若い上忍たちの間で、ウワサになってるし……。
さすがにお腹が目立ってきて最近はなかったけど……」
「え!?」
思いもよらなかった言葉にポカンとしてしまう。
すると、はぁ、とため息をついたカカシが、しなだれかかるように抱きついてくる。
「やっぱわかってなかった……。
って、ちょっと、嬉しそうにしないでよ」
思わず笑っていたわたしを横目でカカシが睨む。
「嬉しいけど、それはカカシがヤキモチ焼いてくれたからだよ。
わたしが好きなのは、今も昔もカカシだけだもん」
肩に乗っていたカカシの頬にちゅ、とキスすると、カカシが首を伸ばし、わたしの唇を捉える。