第22章 愛ゆえの我儘
まだ9月の初めだというのに、冷たい雨が降っていた。
季節を間違えたかのようにシトシトと降り続ける雨は、まるで近く始まるであろう戦争を嘆いているかのようだった。
里の空気もどこかピリピリとしていて落ち着かない。
孤児院は戦地になるかもしれない里から、来週中にも風見鶏の家に避難することになっていた。
ちょうど離れを増築したばかりだったため、喜んで受け入れてくれた。
一番の懸念事項だった避難場所が見つかりホッとしたものの、わたしの気分は晴れないままだった。
わたしは戦争には出られない。
カカシと共に戦い、守ることもできない。
妊娠の分かったお腹は8ヶ月目に入り、だいぶ目立つようになってきていた。
来週わたしも、孤児院の子供たちとこの里を離れる予定になっている。
でも、わたしは行きたくなかった。
カカシは強い。
でも、暁も強いし、未だに得体が知れない。
写輪眼の使いすぎで倒れるカカシを、何度も見てきた。
今度は死んでしまうかもしれない。
それなのに、わたし1人安全な場所にいるなんて嫌だ。
少しでも力になりたい。
守りたい。
仕事終わり、わたしは火影室を訪れていた。
「ダメだ!」
眉間に皺を刻んだ5代目の即答に食い下がる。
「お願いします!どうしても残りたいんです!!」
「ダメだ!ここが戦地にならんと誰が言い切れる?
腹の子のことを考えてやれ!
お前の仕事は他にあるだろう!!
この話はしまいだ!
出て行け!」
5代目は、書きかけだった書類に目を落とし、早く行けと言うようにしっしっと手を払った。
その時バタンっと火影室の扉が開いた。
「5代目、急ぎお伝えしたいことが……」
火影室に入って来たカカシとパッと目が合う。
「お前の旦那はいつもいいタイミングで現れるな。
カカシ、コイツをどうにかしろ!
里に残ると言ってきかん」
一瞬驚いた顔をしたカカシに鋭い目で見られ、思わず目を逸らす。
するとグイッと腕を引かれる。
「そんなの無理だって、どうすべきかなんて、自分が一番分かってんでしょ……」
怒りの感情を抑えたような低い声だった。
怯みそうになる自分を鼓舞してカカシを見上げる。
「……っ、でもわたしは……」
「今はサクの我儘に付き合ってる暇はない!」
パッと掴んでいた腕が離れて肩を出口の方にグッと押される。
「……っ!」
