第19章 帰郷
ジョッキを手で包んでサクが楽しそうに話す。
「でも、思ってた以上に大変で。
特に寒くなってから!
誰かが風邪を引くと、小さい子たちは隔離しても順番にみんな引いちゃうの!
赤ちゃんとかは寝れなくなっちゃうから一晩中抱っこしてなきゃいけなかったり、吐いちゃったりしたら、夜中に洗濯して、シーツ変えたり…。
スタッフも総動員で……。
ここ1ヶ月くらいは毎日戦争みたいだったよ」
大変そうなのに嬉しそうなサクに、ホッとする。
楽しんでるみたいでよかった。
「カカシは?
仕事どう?暗部は相変わらず忙しいの?」
「ん、相変わらずだよ。
でも、実は春から上忍師になることに、なった」
「えええええ!?」
サクが、ビックリして食べかけのコンニャクを持ったままオレを見る。
「ビックリでしょ。オレに務まるのかな…」
「いや、いやいや。ビックリしたのは急だからで。
絶対合ってるよ!!」
「そう……?」
ずっと暗部でやってきたオレに、部下を持って育てることなんてできるんだろうか……。
オレの漠然とした不安を感じ取ったのか、サクがそっとはしを置き、オレを見つめる。
「カカシは面倒見いいし、クールそうに見えて実は情に厚いし、絶対向いてるよ!
でも、エロ本だけはやめなきゃだけどね。」
最後におどけるサクに、「それはムリ」と返しながらも、心が少し軽くなる。
「でも急だね」
「ああ、働きすぎのオレに、ガイとかアスマとか紅が3代目に直訴してくれたらしい。
みんなオレに直接は言わなかったけど、心配してくれてたみたい」
サクが行っちゃってから、また以前みたいにがむしゃらに働いていたことは、心配をかけるだけだからサクには黙っておく。
「そっかぁ。
楽しみだな。
カカシが上忍師になるの」
アルコールのせいでほんのり頬を染めたサクがニコリと笑う。
「ああ、でも暗部の冴えわたったカカシは、もう見れなくなっちゃうのかぁ。
カッコよかったのになぁぁ」
カッコいいと言われて悪い気はしないが、店先で言われては、どうにも落ち着かない。
「サク、酔ってるでしょ……」
ニコニコ笑いながら、サクがおかわりしたおでんを頬張る。
「酔ってても、酔ってなくても、カカシはかっこいいよぉ」