第19章 帰郷
2人で過ごす1日はあっという間で、すっかり日が落ちてから、俺たちは夜ごはんを求めてブラブラと歩いていた。
「サク、何食べたい?」
「んー、久しぶりにあそこの定食屋、あっ、でもあのカレーも食べたいし、でも焼き鳥も捨てがたい…」
キョロキョロとごはん屋さんを物色するサクは、久しぶりの木の葉の里に、テンションが高い。
「明日もあるし、一個に絞らなくてもいいんじゃない?」
「そうだよね。
あーでも迷う……」
決められずに通りの端まで来た時、曲がった先からだしのいい匂いが漂ってきた。
屋台のおでん屋だ。
冬になったら必ずここに店を構える有名なおでん屋で、オレたちも毎年何度か訪れていた。
そういや、今年はまだ行ってなかったな。
今日寒いし、あそこの味染みただいこん食いたい……
そう思ったときサクが、「あっ!あのおでんがいい!」と屋台を指さした。
「ふふ、オレも今食いたいなって思った」
「あの匂いには勝てないよね」
2人で笑い合って、温かい湯気が上がる屋台の椅子に並んで腰掛ける。
「らっしゃい。
お、久しぶりだねおふたりさん」
恰幅のいい大将が、湯気のせいか寒さのせいか、赤く染まった頬でニカリと笑った。
「お久しぶりです!」
サクも嬉しそうにあいさつして、メニュー表をとる。
「先輩何か飲みますか?」
「ん、じゃあ寒いし熱燗いこうかな…。
サクは?」
「明日も休みだし、わたしもちょっとだけ飲もう!
おじさん、熱燗とビールください!
あと、だいこんと、たまごと、こんにゃく!」
「あいよ!
兄ちゃんは?」
「じゃあオレはー、だいこんと、はんぺんと、牛すじください」
「あいよ!」
「おつかれ」と乾杯して、ハフハフしながら出汁が染み込んだおでんとおいしい酒を、しばらく無言で堪能する。
「はーーーぁ、しあわせーぇ……」
だいこんをビールで流し込んでトンっとジョッキをテーブルに置いてから、サクが目をつぶってしみじみと呟く。
「だね」
上機嫌のサクに、こっちまで幸せな気持ちになる。
「仕事どう?
もうすぐ一年たつな」
「そっか!もう一年!
早いなぁ……。
仕事、すごく楽しいよ!!」