第19章 帰郷
ああ、もう出来上がってるな。
ビールはまだ半分も減っていない。
アルコールの弱さは相変わらずのようだ。
ヘラヘラ笑いながら、いつもなら恥ずかしがって絶対に言わないセリフをバンバン言うサクは、死ぬほど可愛い。
今も、かっこいいだの、ここが好きだの、ペラペラと上機嫌でしゃべっている。
でも、大将が前にいるのでは、どうにも居心地が悪い。
ちょっと飲み足りなかったけど、このままここにいるのもいたたまれなくなって、まだ飲みたいと言うサクを引きずって勘定をして外に出た。
立ち上がると余計に回ったのか、危なっかしい足取りのサクをおんぶして人通りの少ない道を選んで歩く。
なんか、潜入任務の時を思い出すな。
居酒屋で麻薬常習者を張ってて、その時にサクが酒を飲んで足が回らなくなって……。
あのときも、こうやっておぶって帰ったっけ……。
今思うと、たくさん思い出あるよな。
あっというまだったサクと過ごした時間をひとつひとつ思い出すと、自然と頬が緩む。
いつの間にかオレの肩に顔を預けて眠ってしまった無防備なサクにキスをして、オレはまた歩き出した。