第4章 夕虹
ウキウキと毎日をすごした。
地獄の期末テストも、これさえ終われば大野さんと映画だ!と思うと、モチベーションもあがるから、勉強もはかどる。
我ながら単純だな、と思いつつ、俺は毎日机に向かった。
結果、中間テストに比べ、大きく点は伸びたと思う。
手応えは、すごくあった。
まだテスト結果は分からないけど、「少なくとも、分からなくて真っ白な部分はなかったよ」と、大野さんにLINEで報告すると、すごいね、と、絵文字つきで盛大に褒めてもらえた。
嬉しい。
日曜日、上機嫌で髪の毛をセットしてると、のっそりと兄貴が起きてきた。
「おはよ、兄貴」
「ん……はよ」
兄貴は寝癖をピンとたてながら、寝ぼけ眼で歯ブラシを手にする。
いつもシャンとしてる兄貴が、ちょっとだらしなくみえるところが好き……だった。
以前のような、苦しさを感じない俺は、いよいよ兄貴への想いは昇華できたのだな、と冷静に感じながら、髪にムースをつける。
「……どっか行くのか?」
シャカシャカと歯を磨きながら、兄貴は鏡越しに俺をみた。
俺は、ドライヤーを手に取り、うん、と頷いた。
「友達と映画にね」
すると、兄貴は、
「デートか」
と、聞いてきた。
……一瞬、そうだよ、と言おうかと思った。
でも、
「ざーんねーん。男です」
と、おどけておくにとどめた。
あえて、大野さん、とは言わなかった。