第4章 夕虹
Nino
…………智が俺に嘘をついた。
自室のベッドに転がりながら、爪を噛む。
噛みすぎて、端に血が滲みはじめてるのに、噛むことがやめられない。
どうして、一年生はとっくに授業が終わってるのに、俺があの時間にあそこにいたかなんて考えないの?
俺もそれまで図書室にいたんだよ……?サト。
試験前だもの。
だから、松本が図書室にいたことも知ってる。
塾の時間があるから帰んなきゃ、と出た時間がたまたまあの時間だっただけさ。
そんななか、バッタリ出会った智が、図書室に向かうって知って、即座に松本の後ろ姿が浮かんだ。
あなたは、今から会うのはクラスの友達って言ったけど、そんなの嘘だってすぐわかったよ。
いるわけないでしょ、あなたに、そんな人。
確かめたくもなかったから帰りかけたけど、やっぱりちょっと気になって図書室に戻った。
……見なきゃよかったよ。
智が松本の手を握ってた。
は?って思った。
……なにしてんだよ?って。
頭が真っ白になって。
苦しくなって、走って帰った。
胸をどろどろしたものが覆いつくしてゆく。
なにしてんの?なにしてんの?
あなたそんな人じゃないでしょ。
クールで、人に興味なくて、でも俺の前でだけ可愛らしい姿を見せる人でしょ。
こんなの智じゃない。