第4章 夕虹
純粋に、綺麗だな……と思った。
あまり気にしてみたことはなかったけど、ページをめくる指は、意外と細くてしなやか。
図書室のオレンジの照明が、彼の落ち着いた表情を際立たせていて……無邪気に笑う顔とのギャップを感じる。
やがて、視線を感じたのか、ふと、松本が顔をあげた。
ぼけっと突っ立ってる俺と目があうと、松本は嬉しそうに微笑んだ。
その瞳はいつもの子犬のような瞳で。
トクンと心臓がなる。
「…………」
なんだろ。
なんかいちいち気になるやつなんだよな。
……俺、人になんか興味持たない主義なのに。
「大野さん?」
「……え?」
「お疲れ様。座ってよ」
「あ……うん」
松本がニコニコして、自分の横の椅子をポンポンと叩いた。
俺は、フラフラと引き寄せられるように、松本の隣に座る。
「早かったね。もっとかかるかと思った」
読んでた本を閉じて、松本が微笑む。
……うん。
なんか、お前に会いたかったって言われてたから、俺、嬉しかったんだろうな……帰り支度とかさ、急いでやったし。
ぼんやりと考えてたら、
「どしたの。荷物おけば(笑)」
「ああ……そっか」
俺の様子に、松本は、面白そうに肩を揺らした。