第4章 夕虹
「そっか。じゃあお邪魔だね」
ニノがちょっと寂しそうに呟く。
俺は、ちくちくと罪悪感を感じながら、
「ん。ごめんな」
と手を振り返し、踵を返すニノの背中を見送った。
クラスの友達なんかじゃない。
約束をしてるのは、松本だって……言ってもよかったんだけど。
なんだか、秘密にしておきたい気分だったんだ……。
なんでだろうな……。
自問自答しながら、図書室に入る。
勉強嫌いな俺が、ここを使うことはほぼない。
なんなら、ここに入ったのは入学当時にクラスで見学に来たとき以来かもしれない。
へぇ……
すっかり記憶から抜け落ちてたここは、綺麗な施設であった。
窓は大きく開放的で、テーブルは、あちこちに点在してる。
広いから、調べものをするには便利だからだろうという狙いなのだろうが、こういう場合は困るな、と、思った。
どこにいるのだろう。
俺は、棚の間を静かに歩きながら、勉強したり本を読んでる人物を確認する。
そのうちに、窓際に並ぶテーブルのひとつに、頬杖をついて読書している彼をみつけた。
長い前髪が影をおとす、物憂げなその横顔に、俺は思わず見惚れて、その場に佇んだ。