第4章 夕虹
待ち合わせは、図書室のなかのどこか。
一年生の方が早く授業が終わるって聞いたし、図書室は下校時まで開いてるから、松本には先に行っててもらうことにする。
七限が終わり、リュックを背負って図書室にむかう。
この学校の図書室は、とても充実してて独立した建物になってるから、一度校舎の外にでなければならない。
俺は、松本を待たせてるから、とちょっと早足で歩いていた。
そして、まさしく図書室に入ろうとしたところで、
「あれ?サト?」
ふいに名を呼ばれ、振り返る。
視線の先では、ニノが驚いたような顔で立ってる。
「ニノ……」
「珍し。図書室行くの?」
「ああ……うん、まあ」
「じゃあ、今から豪雨だ」
小雨の空を見上げ、ニノが呟いたから、
「……おい」
と、つっこんでおく。
ニノは穏やかに笑ってる。
俺は、彼が昨日体調が悪いと言ってたことを、思い出した。
「そういや、頭が痛いのなおったのか?」
「…………うん」
「ふうん、そりゃよかった」
ニッコリ笑ってやると、ニノはちょっと複雑そうな顔をした。
でも、すぐ気を取り直したように、話題をかえてくる。
「サト、今から勉強すんの?」
「うん」
「……俺も行っていい?」
多分、ちょっと前なら、松本と同じクラスならニノも知り合いだろうと、同じ席に勝手にまきこんでいただろうけど。
「……ああ、ごめん、人と待ち合わせしてて」
俺はニノの願いを断った。
「同じクラスの人?」
ニノは何気なく聞いたのだろう。だけど、何故か。
「……うん」
俺は嘘をついた。