第4章 夕虹
「なんか…あったの?」
その寂しそうな笑顔に、聞かずにはいられなくて、思
わず問いかける。
すると、松本は、再びゆるく首を振った。
「うん…でも、もう大丈夫。ありがとう」
「……そう」
そう言われたら頷くしかなくて。
俺は、パシャ…と、水たまりをよけながら、松本の隣を歩く。
いつも元気で強いイメージの松本が、こんな顔をみせることに戸惑っている俺がいた。
そして同時に、俺に会いたいと強く願ってくれていたときに、それに応えることができなくて、申し訳ない思いでいっぱいになった。
だから、
「あ……じゃあさ、今日の放課後、俺に大野さんの時間くれる?」
「……え?」
「図書室。付き合ってよ」
そういって、ニッコリされたもんだから、俺はもう反射的に、うん、と言ってた。
勉強教えてって言われるのかなぁ、と気がついたのは、松本と別れたあとで。
俺はその日一日、いつもより真面目に授業をうけた。