第4章 夕虹
翌朝は、小雨だった。
蒸し暑いいつものバスに乗り、定位置に松本が座ってるのを確認する。
昨日、LINEに思い切り気がつかなかったしな。
謝んなくちゃ。
そう思って、いつものように目をあわそうと体をそちらにむけて伸び上がる。
……あれ。
でも、彼は、今日は壁にもたれて目を閉じていた。
いつも、アイコンタクトをとっていたから、ちょっと残念な想いが芽生える……と、同時に、彼が少し心配になる。
だって、朝から寝てるなんて初めてだ。
いつも、待ちかねたように犬みたいな目で俺を見てくれるのに。
俺は、乗客のなかを泳ぎながら、少しずつ松本の席に接近した。
そうして彼の真横の手すりをつかむことに成功する。
松本……?
間近で見下ろす彼は、くったりと壁にもたれ目を閉じてる。
その顔は、心なしか青ざめてて。
目の下にもくまがある。
明らかに具合悪そうだ。
……どうしたんだろう。
そうこうしてる間に、降車するバス停についた。
ガヤガヤと同じ学校の生徒が移動をはじめるなか、松本は起きる気配がない。
仕方なく、俺は松本の肩を軽くゆすった。
「ねぇ、着いたよ」
「……ぅん」
松本が一瞬顔をしかめて、ゆるゆると目をあけた。
その目が、安堵したように柔らかく細められた。