第4章 夕虹
「そっか……それならいいけど。悔いの残らない選択をしてね」
「うん……ありがと」
優しく笑う雅紀さんに、頷く。
俺は、この人に甘えるのは、高校生までって決めてる。
だって……きっと、俺がいるせいで雅紀さんは恋人をつくってない。
俺が一人だから自分も一人でいないとって思ってる。
そういう人だもん……。
ごめんね。
「智。夕飯食べてくだろ?何がいい?」
時計を見上げて、雅紀さんが立ち上がった。
俺は、慌てて胸のなかの想いを押し込めて、即答した。
「炒飯がいい。卵のやつ」
一人なら食べない夕飯も、雅紀さんと一緒なら話は別だ。
「ふふ……好きだね、それ」
「……雅紀さんのつくったの美味しいもん」
「そっか。じゃあ、餃子もつけたげよう」
「ほんと?」
「こないだにぎったのを冷凍してるんだ」
そういってキッチンにむかう雅紀さんを見つめる。
昨日から、ちょっと胸につかえてたことが、サラサラととけだしてゆく。
俺のしてることは……危険かもしれないけど、間違ってなんかいない。
……この人のためなら、体なんか惜しくないよ。
恋愛感情はないけど、……家族のように、大事な人。