第4章 夕虹
うつむいたまま電車にのり、うつむいたまま駅から早足で歩く。
自分という姿を早く隠したい。
そんな想いだけで、俺はコンビニの袋をぶらさげ、ひたすらに歩いた。
途中でまた雨が降ってきたけど、蒸し暑かったから、ちょうどいいとばかりに濡れたまま歩いた。
ようやく、自分のアパートにたどりついて、ポケットから鍵をだす。
鍵穴に鍵を差し込みまわすと、スカッという手応え。
……来てる。
今の自分は誰にも見られたくないけど、彼ならいいか、と思うのは、最早、身内の感覚のせいか。
危ないから、家にいるときは鍵をしめとけっていうのに、俺の帰りそうな時間にあわせて、決まって開けててくれてるみたいで。
何事にもクールで、めんどくさがりなのに、彼はそういう気遣いができる男だった。
そっと扉をあけると、 玄関の明かりが迎えてくれる。
首をのばすと、ほの明るい蛍光灯の光の下で、スマホゲームをしてるニノの横顔が見えた。
「おかえり……」
ニノが、こちらを見ずに声をかけてくれる。
俺は、いつものトーンの彼にホッとしながら、
「ただいま」
と、言った。