第4章 夕虹
Nino
だいたい隔日で、カジュアルバーのフロアのバイトをいれてる智は、週末だけ裏をいれる。
それこそ、片手間に始めた個人接待のバイトなのに、今やあの店での指名率は一番高いようだ。
最初は、戸惑い気味だった智は、今や、毎週金持ちの誰かに抱かれてる。
智は、手っ取り早くお金が入るからいいんだ、とあっけらかんと口ではいう。
でも、うなされてた頃を知ってる俺には、それをそのまま信じる気にはなれなくて。
だって、好きでもない自分と同じ男に抱かれたい、だなんて、誰が思う?
……俺は、いつしか、週末は智の家に来て、帰りを待つようになっていた。
今日も、智のアパートの扉横のメーターボックスの裏に貼り付けてある鍵を使って、勝手にお邪魔する。
親には、友達の家で勉強する、ということになっているから、勉強道具の入ったリュックを部屋のすみに投げた。
狭い部屋は、智の甘い匂いが満ちていて、なんだかホッとする自分がいる。
買ってきたおにぎりを食べて、いつもの定位置に座り、スマホゲームを立ち上げる。
レベルをふたつあげたころ、玄関のドアがカチャ……と音をたてた。
「ただいま」
静かな声に、目をやると、びしょ濡れの智がみえて、俺は驚いて腰をあげた。