第4章 夕虹
「潤?オーレでいいのか?…おっと……失礼」
そこへ、柔らかい声と共に、反対側の通路から顔を出した青年が、俺たちを見て口をつぐんだ。
目の大きな色白の男性だ。
知り合いか?とでもいうような表情をみせる彼に、松本は軽く頷き、俺に向かって
「これ兄貴です」
にっと笑って、その青年を指差した。
その人は、これっていうな、と呟いて、
「……はじめまして。潤の兄です」
と、軽く頭を下げてきたから、俺もぺこりとお辞儀をした。
「……大野です」
「この方、学校の先輩なんだ」
松本がつけ加えると、松本の兄貴は、そうか、と頷いた。
一見似てないようだけど、目の大きなところとか、雰囲気は似てる。
美形兄弟だな、と思った。
なんで、松本とこんな時間に出会うのだろうと思ったが、彼に兄がいるならば、この時間まで外にいるのもわかる気がする。
二人で食事でもしていたのだろうか。
真っ当な人たちに、今の俺を見られたくない、と無意識に伏し目がちになってしまう。
ところが、松本が、そんな俺をのぞきこむ気配がして……ふと、目をあげた。
「……大野さんメガネは?」
「…………ああ」
学校を離れたらはずしてるアイテムだ。
実は伊達だよ、なんて言えねぇな……
考えて、
「ちょっと、目が疲れたから……」
と、適当な言い訳をした。
コンタクトでもあるまいし……だいぶ無理があるな、と我ながら思ったのに、松本は、素直にへぇ~!と目を輝かせてる。
「印象かわるね」
「……そう?」
「うん。すごい綺麗」
「潤。先輩だろ。そんな言い方失礼だろ」
たしなめる兄に、だってほんとのことじゃん、と、松本が不思議そうな顔をした。