第6章 春の虹
ほんの数分休もうと思っただけだ。
目の奥がなんだか重怠くて、目を開けてられないし。
この寒気も、ちょっと眠ればおさまるかと思ったから。
だが。
………係長
「…………」
………………大丈夫ですか?係長
「…………うん」
うつらうつらとしながら、返事をしたとたん、自分の声で、はっと我に返った。
しまった、寝過ごした
目をあけると、心配そうな顔をした二宮くんが俺をのぞきこんでる。
「…………具合悪そうですね」
「ああ……うん。大丈夫だよ」
霞む目で腕時計をみると、あれから1時間は経過していた。
やべ…起きなきゃ
心配されることは本意じゃない。
慌てて壁にもたれていた体を起こしかけたが、二宮くんに制止された。
「大丈夫じゃないです。全然。もう帰ってください」
「いや、ほんとに…」
「わかってます?係長。顔色最悪ですよ。俺、寝ながら震えてる人初めて見ました」
「………」
なんだか二宮くんは怒ってる口調ぽいけど、ぼんやりしててそれを突っ込む気力がない。
「電話する得意先ありますか?」
「…えと……ない…かな」
反射的に答えると、二宮くんは、俺の傍らにあるノートパソコンを素早く手に取り、何やらカタカタいわせたかと思うと、パタリと閉じた。
………えっ
「パソコンはもうシャットダウンしたんで」
ちょっとだけ怖い顔をつくった二宮くんは、失礼します、と、俺の額に手をあてた。
すると、みるみる表情を曇らせた彼は、俺に向き直る。