第14章 誕生
3月2日。
シマさんの代わりに来てくれたハルナは、無口だが、よく働いてくれていた。
屋敷に来て日の浅い人らしく、すずらんも1、2度しか会ったことがないらしかった。
珍しく早く切り上げられたので、すずらんの好きなケーキを買って家路を急ぐ。
家に着くといつものようにすずらんが迎えてくれる。
晩ご飯を待ってくれていたらしく、ハルナと一緒にハンバーグを作ったからと、嬉しそうにオレの腕を引いてキッチンへと連れて行く。
「すごいご馳走だね」
食卓にはたくさんのおかずが並んでいた。
「でしょでしょ。
今日はカカシが早いって言ってたから、ハルナさんに手伝ってもらってたくさん作ったんだよ!
さっ食べよ食べよ!」
「うん。ハルナさんもありがとうございます。
いただきます」
ハルナは目をそらし、「いえ」とだけ答える。
あまり話さないのはいつものことなので、気にせず食べようとスプーンをスープにつけた瞬間、微かな異臭を感じる。
「すずらん!食べないで!!」
「え?」
強く言うと、焼いたパンを取ろうとしてたすずらんの手がビクリと止まる。
「ちぃ!」
その瞬間ハルナさんがテーブルに手をつき飛んで、一気にオレとの間合いを詰める。
食べ物が宙を舞い、落ちたお皿やコップが割れて音を立てる。
すずらんがハルナに押されて椅子ごと後ろに倒れる。
「きゃっ!!」
咄嗟にお腹を両手で庇ってすずらんが転がる。
「すずらん!大丈夫!?」
ハルナに応戦しながら、すずらんの様子を伺う。
「よそ見している暇はないぞ!」
ハルナの強烈な蹴りを左手で受け、横から入るパンチをするりとかわす。
すずらんが起き上がるのが見えホッとした瞬間、腕に鋭い痛みを感じる。
ハルナのクナイが掠ったのだ。
「…っ!!」
その瞬間
視界がぐらりと歪み、床に倒れてしまう。
クソっ毒か…!
「カカシ!!」
すずらんが叫ぶ声が遠くで聞こえる。
ハルナのクナイが首めがけて振り下ろされるのが視界の隅に映る。
「火影!覚悟!!」
そのときバッと人影が降りてきてハルナのクナイを弾いた。
護衛についてくれていた暗部が、音を聞いて駆けつけたようだ。
ハルナが後ろに飛んで、窓を割り逃げる。
回らない舌で「あいつ、武器に毒を……」となんとか言う。