第12章 贈り物
ギュッと抱きついてくるカカシの背中をポンポンと叩いて慰める。
「わたしも一緒になって寝てたし、おあいこだよ」
わたしに覆いかぶさっていたカカシが、コロリと横にズレてわたしを見つめる。
「遅くなっちゃったけど、一緒に行きたいところがあるんだ。
来てくれる?」
「行きたいところ?
もちろん、いいけど…」
なんだろう?
不思議に思いつつ、暗くなる前に急いで支度し家を出る。
着いたのは、カカシの職場に程近い、住宅街の中にある空き地。
「来たい場所って、ここ?」
夕陽が照らすこの場所には、看板ひとつない。
「うん。
実は、すずらんにプレゼントが2つあって。
ひとつ目はコレ」
そう言うと、カカシがわたしの手を取って、手首に華奢なパールのブレスレットを付けてくれる。
「わぁ。可愛い…」
小粒で控えめなデザインだから、普段にもつけやすそうだ。
「誕生日おめでとう。
すずらんによく似合ってる」
「ありがとう!
大事にするね」
うん、とうなずきカカシが微笑む。
「あともうひとつは、プレゼントと言うか…。
2人のためなんだけど、この場所なんだ」
「え?ここ?」
空き地を指差すカカシに、訳がわからない、と顔を向ける。
「ここにオレたちの家、建てよう」
予想だにしないプレゼントにポカンとなってしまう。
「今の家もいいけど少し遠いでしょ?
ここなら職場まですぐ行き来できるから、休憩のちょっとした時間でも会いに帰れるし、すずらんにもしものことがあってもすぐ助けに行ける」
夕日に照らされて、影になったカカシの顔を見上げる。
嬉しくて目頭が熱くなる。
「オレ、前にすずらんをそばで一生守るって、イッシン様に約束したことがあるんだ。
すずらんにも、ここで誓うよ。
すずらんのこと一生愛して守り抜く。
だから、これからもこの場所で、オレの隣でずっと笑ってて」
喉が震えてうまく言葉が出てこなくて、コクコクと何度も頷く。
目を閉じると涙が頬を伝って流れ落ちた。
「すずらん、愛してる」
顔を上げると涙で歪んだ視界の中、カカシがこの上ない優しい笑顔で微笑んでいる。
「わたしも、愛してるよ。カカシ…。
大好き…。
ありがとう…」