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きみを想う

第11章 蜜月


「このままじゃ手が届かないから、そこの椅子に座ってくれる?」

近くにあった椅子に腰を下ろすと、すずらんがオレのアンダーの裾に手をかけて、ゆっくり脱がしていく。

「痛かったら言ってね」

「うん。
なんか、照れるね。これ」

ふっと照れ臭くて笑うとすずらんも笑う。

「うん」

まず怪我していない方の手を先に抜くと、ゆっくり傷に触れないようにアンダーを脱がせてくれる。

ほぅ、とすずらんが短く息をつき、視線をオレの下半身にむける。
ああ、そうだよね…。

すずらんの顔はりんごみたいに真っ赤になってしまっていて、思わず笑みがこぼれる。

「ふ…。すずらん、顔真っ赤」

「だって…」

「下は自分で脱げるからすずらんも脱いじゃいなよ。」

「…うん」

すずらんの脱いでるとこなんて見たら、したくなっちゃいそう、というか風呂に一緒に入って我慢できるかも怪しいけど…。
パッと脱いでしまうと、オレは「先に行くね」と言い、うなずくすずらんを残して、先に外に出る。

夕方になり外は裸では少し肌寒いくらいの気温になっていた。
かけ湯をして湯船に体を沈めると、花の香りがふわりと香った。

少ししたら、すずらんが前をタオルで隠してカラ…、とドアを開けて現れる。

予想以上、だね…。

夕日に照らされて恥じらうすずらんはすごくきれいで、ドキリと心臓がはねる。
平静を装い、「寒いから、とりあえず温まろ」とすずらんを手招きする。

かけ湯をしてすずらんがチャプ、とゆっくりと体を沈め、丸い湯船に向かい合って座る。

「気持ちいい。
それに、すごくいい景色だね」

夕日に染まる山々や、夕焼け空のグラデーションを見て、すずらんがため息をもらす。

「うん。オレにはすずらん込みで、いい景色だけど…」

「……っ!」

顔を赤くしたすずらんを、くいっと怪我をしてない方の手で近くに引き寄せ、腕の中に閉じ込める。
チャプっと乳白色のお湯に波が立ち、花びらが揺れて香りたつ。

「出会ったときは、すずらんのことこんなに好きになるなんて思わなかったな…。
お見合いの写真とのギャップには驚いたけど…」

思い出して苦笑すると、「ギャップ?」とすずらんが聞きかえす。

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